道産ワインと食のペアリング企画シリーズ
北海道のワイナリーはいまや50以上となり、さらに増え続けています。あたらしい日本ワインの生産地として注目されている北海道のワインと、それに合う道産食材を5回シリーズでご紹介していきます。地域食材とのペアリングを通して、発展目覚ましい道産ワインを体感してみませんか?
シリーズII
ぶどう栽培からワイン造りへ
~宝水ワイナリー編
ふらのワインに続く第二回目は、積雪2mを超える雪国でのワイン造りという、きわめて稀な挑戦を続けている岩見沢市の宝水ワイナリーを取り上げます。ぶどう栽培から始まり、「岩見沢市・宝水町の風土が溶け込んだ手工芸のワインを」との思いを胸にワインづくりを続ける同社。北海道開拓の入植者からの三代目、現社長の倉内さんが始めたワイン造りについて、ご紹介いたします。
宝水ワイナリーについて
岩見沢丘陵と呼ばれる、日高山脈と石狩平野の間に位置する小高い丘の斜面の中腹に宝水ワイナリーの醸造所はあります。その周囲のなだらかな斜面にはぶどう畑が広がっています。
宝水ワイナリーの始まりは、北海道開拓で福井県から入植して100年以上に渡って歴代農業を営んできた倉内家の3代目、倉内武美(現社長)さんが、1983年に連作障害対策としてポートランド種のぶどうを栽培したことでした。当時は実ったぶどうは道内のワイナリーに全量供給していました。
その後2002年に「岩見沢産のワインを造ろう」という市の声掛けで岩見沢市特産ぶどう振興組合が設立されて、複数農家によるワイン用ぶどう栽培が本格的に始まりました。その組合を母体に2006年に倉内氏はじめ宝水地区の農家の共同出資で株式会社宝水ワイナリーは設立され、ワイン造りがスタートしました。
設立当初は知名度が低いなかでの販売活動、ぶどうの収量が安定しないなどの苦労があったものの、2008年に自社ブランドの「RICCA(リッカ)」が国産ワインコンクールで銅賞を受賞して注目されるように。
その後、2012年にぶどうの収量が20tを超えるようになり、2014年に「ぶどうのなみだ」のロケ地として知名度が上がりました。 現在、ぶどう畑で栽培しているのはケルナーやシャルドネ、レンベルガーなど7種類。「テロワールの溶け込んだ手工芸のワインを」を社のモットーとするとおり、独特の酸味とミネラル感に惹かれる宝水ワイナリーファンは着実に全国に広がっています。
宝水ワイナリー一帯の宝水町という地名は、大正15年に「宝池」という農業用の溜池が出来たことに由来します。水田を豊かにしてくれる「宝池」に龍神を祀って大切にしていた住民は、1963年の町名変更のときに、「宝池」の良い水に恵まれていることに感謝の意を表して宝水町と名付けたそうです。
醸造担当の久保寺祐己さん(32)に聞く
醸造担当の久保寺さんが宝水ワイナリーに新卒で入社したのは2014年。以来、ぶどう栽培とワイン造りに全集中を注ぎ続ける北海道期待の若手ワインメーカー(醸造家)に、ワイン造りへの想いと抱負を聞きました。
—-宝水ワイナリーとの出会い
ワイン造りが盛んな山梨県の石和町に生まれて、子供の頃からぶどう畑を見て育ちました。勉強は数学が好きで大学は理学部に進んだのですが、2年生のときに醸造、微生物の世界の面白さに目覚めて、ワインづくりを学べる専門学校に入り直しました。
その頃に就職活動で宝水ワイナリーを訪問。「僕はここに移り住んでワイン造りをするのだ」と直感的に決心したのです、勝手に (笑)。そして、倉内社長にお願いをして無事に宝水ワイナリーに入社できました。
—-テロワールを大切にするワイン造り
ワイン造りでは、ぶどう栽培とワイン醸造の二つの工程があります。宝水ワイナリーは自社のぶどうだけでなく、他の地域のぶどうでもワインを造ります。
醸造用ふどうの栽培が盛んな北海道は、いろいろな畑のぶどうでワインを造れるので、醸造家にとって恵まれた場所だと思います。さらに、自社栽培のぶどうを使って醸造まで一貫してワインを造れることには、大きな喜びを感じます。
このあたりは宝水地区と呼ばれるようにきれいな水に恵まれ、また、20万年から10万年年前までは海底であったといわれ、母材に塩分やカルシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。
しかし、豊富と言ってもミネラルの塩味は繊細かつ消えやすいので、ここで育ったぶどうが持つ個性を醸造の工程でうまく引き出すのが自分の役割と思っています。
—-「雪」が育むワイン
北海道のワイン造りを考えるとき、避けて通れないのが「冬=雪」の存在です。岩見沢は北海道内でも豪雪地帯の筆頭で、雪は厄介者と思われることも多いですが、実はその雪が冬の寒さからぶどうの樹を守ってくれるのです。
その秘訣は冬にぶどうの木を雪の下に寝かせることにあります。北海道のワインづくりの先駆者が編み出したこの「寝技」にはたいへん感謝しています。
「雪」が育むワイン。そんな想いから宝水ワインのボトルにはすべて冷涼感、凛とした美しさを備えた「雪」のイメージをあしらっています。土地の特性や個性に立脚した、ぶどう畑づくりとワインづくり、もっと言うと暮らし方、が好きです。
宝水ワイナリーのワインのご紹介
「RICCAシャルドネ 2021」・「RICCA 雪の系譜 レンベルガー 2020」
「RICCAシャルドネ 2021」
「RICCA 雪の系譜 レンベルガー 2020」
醸造所の眼前に広がる自社の畑で栽培したシャルドネ100%の白ワイン。シャルドネは白ワインの代表的な品種で、育つ土地の地質や気候の影響を受けやすい特徴を持っています。 海底が隆起した宝水地区の冷涼な環境では、すっきりと上品な味わいになり、リンゴの香りを感じることもあります。特に2021年はブドウの出来が良く、太陽を感じ取ることができます。
醸造所の眼前に広がる自社の畑で栽培したレンベルガー100%の赤ワイン。赤系果実やスパイス、オークの複雑性のある香り。口当たりは優しく、コクと余韻が長く続くエレガントなライトボディの赤ワインです。繊細でエレガントな赤ワインを目指し醸造しました。
内容量 | 750ml |
アルコール度数 | 11.5度 |
品種 | シャルドネ(100%) |
販売価格 | 2,500円(税込) |
内容量 | 750ml |
アルコール度数 | 11度 |
品種 | レンベルガー(100%) |
販売価格 | 3,300円(税込) |
シリーズ特別販売品
シリーズ特別オンラインセミナーへご招待
第一回目に引き続き、広く皆様に、ワインクラスター北海道の代表である阿部シニアソムリエがご案内するオンラインセミナーのご視聴をプレゼントいたします。
第2回目となる今回のセミナーは、「テロワールを体感する」をテーマに、テロワールの可能性を最大に引き出すのが自らの役目、と語る宝水ワイナリーの若手醸造家・久保寺氏をお招きします。
さらに札幌の老舗レストラン「オリゾンテ」の元料理長にして現在は湖水地方牧場にて酪農とチーズ作りを行う藤井シェフが、自らの手により作り上げたチーズを用いて、岩見沢の食材とその土地を感じられる「ワインとチーズのテロワール」の世界をテーブルに繰り広げます。阿部シニアソムリエがご案内する、久保寺氏と藤井氏の織り成すテロワールの世界、ご期待ください。