道産ワインと食のペアリング企画シリーズ
北海道のワイナリーはいまや50以上となり、さらに増え続けています。あたらしい日本ワインの生産地として注目されている北海道のワインと、それに合う道産食材を5回シリーズでご紹介していきます。地域食材とのペアリングを通して、発展目覚ましい道産ワインを体感してみませんか?
シリーズI ふらのワイン編
1回目は、今年設立50周年を迎える「ふらのワイン」(富良野市ぶどう果樹研究所)。当たり前のようで日本ではなかなか難しいことなのですが、「ふらのワイン」は富良野のぶどうからしかワインを造っていません。北海道のワイン生産をいまに伝えてきたフロントランナーである同社の歴史とこれからをご紹介します。
地域が一体となって紡いだ、ふらのワイン50年の歴史
1972年、ふらのワインは道内で2番目に古いワイナリーとして誕生しました。当初は、小さな木造の建物に油性ペンで「富良野市ぶどう果樹研究所」と書かれた表札が掲げられただけの簡素な施設で、ぶどう栽培と醸造研究をスタートさせました。
その頃の富良野の農業はそれまで主力だった米作が、1969年からの全国的な米の生産調整を受けて、たまねぎやにんじんなど、他の野菜と組み合わせる複合型の農業に転換せざるを得なくなった時期にありました。
そんな中、当時の高松竹次市長が、日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きい富良野の気候がワイン生産の本場であるヨーロッパと似ていることに目を付け、醸造用のぶどう栽培に取り組むことになったのです。 ぶどう果樹研究所設立の翌年の1973年には、山部地区の石の混じった1haの土地を耕し、参考書を頼りに寒さと病気に強く、収量も安定しているというセイベル系の品種を中心に植栽を開始しました。その際、ぶどうの葉がより太陽の光を受けやすいように、国内では初めて垣根に枝を這わせる「垣根仕立て」を採用しました。それによって、良質なぶどう栽培を初期段階から築くことが出来たのです。
ぶどうの栽培研究と試験醸造を重ねて1976年、清水山の小高い丘に念願のワイン工場が完成。栽培、醸造、製品化まで一貫してできる体制が整い、1978年に販売を開始して、ふらのワインは本格的な生産へと移行していきました。
並行して、富良野市で行われたスキーの国体やワールドカップの大会の折に選手や大会関係者に試飲提供したり、富良野市民に無償提供するなど、ふらのワインのPRを図ってきました。 1979年にはワインと食事が楽しめるワインハウスが完成し、1987年には「ふらのワイン・ぶどう祭り」を初めて開催。2日間で3600人が来場して、飲み放題のワインとぶどうジュースを楽しみました。地元の方にも観光客にも愛されるワインづくりが形になってきました。
1986年には「種苗センター」を開設、ふらのワインを特徴づける山ぶどうとの交配品種「ふらの 2号」の独自開発につながっていきます。
1989年にぶどう果汁工場が完成してからは、様々な品種のワインと、ぶどうジュースをつくり続けています。近年では、長年のぶどう栽培、醸造研究の成果が評価され、日本ワインコンクールでは幾度も、様々な種類のワインで受賞を果たしています。
時代に合わせたワインづくり
いまのふらのワインの製造を支えるのは、2000年にふらのワインにやってきた高橋克幸製造課長。高橋さんは、それまで老舗の醤油メーカーで醤油の醸造をしていましたが、ふらのワインの醸造技術者の募集があることを知って一念発起。醸造の知識と経験を生かして、ふらのワインの醸造担当となりました。高橋さんは、「醸造はそれまでの経験で、違和感なくスタートを切れたが、ぶどう栽培については知らないことばかりだった」と当時を振り返ります。
しかし、高橋さんは素人だからこそ生まれる疑問、視点を大切にし、土壌づくりに取り組みました。ぶどうの樹に手をかけてもぶどうの品質が上がらないのは、土壌そのものを改良しないといけないのでは?と考えて土壌医検定2級を取得。肥料だけでなく、いま土壌に足りないのは何か?を見極め、足りないものを丹念に補っていきました。「最適な土壌の環境に整えれば、健全で糖度が高い良質なぶどうがとれる」。高橋さんは、このことを信念に今も土づくりに取り組んでいます。
また、世界的な気候変動の影響にも細心の注意と対策が必要となっています。例えば年間の平均気温が1度変化するだけで、ぶどうの成長にはとても大きな影響が生まれます。温暖化は北海道のぶどう栽培にプラス要因として捉えられる一方で、積雪量が少なくなると、富良野では雪のないうちに気温が下がって、以前はぶどうの樹の上に雪が被さって芽が凍るのを防いでくれていたのが、凍って枯れてしまう危険も生まれているのです。
そして、高橋さんはこのようにぶどうの品質と収量の向上を実現したうえで、さらに時代の嗜好に合わせたワインづくりにも取り組んでいます。 近年は甘口のワインから辛口のワインに、濃いワインから自然派のやさしいワインに人々の嗜好が変わりつつあります。より多くの方に喜んでいただけるワインをつくるためには、変化を恐れず時代にフィットしたワインづくりを続けることが重要だと考えています。
ワインツーリズムで地域の可能性を引き出す
富良野周辺には、雄大な自然を背景としたさまざまなアクティビティー(観光資源)と、新鮮で良質な食材がたくさんあります。高橋さんは、今後はこうした地域の資源とワインを結び付ける仕組みが必要だと言います。
富良野近郊では、あらたなワイナリーが2社誕生しました。仁木・余市、空知に続くワイン産地を形成できるとおもしろくなりそうです。そうしたなかで、これからのふらのワインは、地元の様々な資源と結びついて、ここにしかない楽しさを提供する原動力の役割を果たしていきたい」と高橋さんは、締めくくってくれました。
ふらのワインのご紹介
バレルふらの(赤)2018年・バレルふらの(白) 2018年
セイベル(13053)、ツバイゲルトレーベ
「バレル(木樽)」の名のとおり、樽材にこだわったフランス産のオーク樽(225L)で1年間熟成させた、やわらかな樽香と、酸は比較的しっかりと感じられるもののまろやかな口当たりのワイン。
商品名 | バレルふらの(赤) |
内容量 | 720ml |
品種 | セイベル(13053)、ツバイゲルトレーベ |
販売価格 | 2,400円(税込) |
セイベル(5279)、ケルナー
バレル赤と同様にこだわりの樽で1年間熟成させた、辛口で白桃、洋梨、白い花といった爽やかな果実香と芳醇な樽の香り、フレッシュですがすがしい味わいがバランスよく調和したワイン。
商品名 | バレルふらの(白) |
内容量 | 720ml |
品種 | セイベル(5279)、ケルナー |
販売価格 | 2,400円(税込) |
シリーズ特別販売品(販売期間を終了しました)
シリーズ特別オンラインセミナーへご招待
シリーズ特別オンラインセミナーに、皆様を無償ご招待いたします。
ふらのワイン50年の歴史、ワイン醸造への思いを生産者から直接お聞きします。
また、富良野を知り尽くした地元フレンチシェフが、グリーンアスパラをはじめ、春の風香る富良野の食材を、ワインを引き立てるお料理に創り上げます。ご自宅でもできるワインと食材のペアリングについてもお聞きしていきます。
【開催URL】
https://www.youtube.com/watch?v=jDUZVHoe4ik
【出演】
水先案内人:阿部眞久氏(NPO法人「ワインクラスター北海道」代表)
生産者:高橋克幸氏(富良野市ぶどう果樹研究所製造課長)
ワインと食材のペアリング監修:永易剛行氏(Furano French「岳」シェフ)